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zoom RSS レンティング陽氏インタビュー第1回 「W杯30位以上の成績突破には、指導者の力が必要不可欠」

<<   作成日時 : 2018/07/12 13:36   >>

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今春、現役を引退したレンティング陽氏を、彼が高校1年生の頃からずっと見守ってきた。引退の話を聞いた時は正直、複雑だった。まだまだ惜しいと言う気持ちと、英断だ、と言う気持ちと・・・・。現在ゴールドウィン本社に勤務。忙しいながらも充実したセカンドキャリアを送っている。シーズン終了後には入籍もされ、新生活をスタートさせたばかりの慌ただしい時期に、少しでも後輩達の役に立てば・・・、とインタビューを快諾してくれた。 5月20日に実施したインタビューは、ランチを挟んで5時間近くに及び、率直な意見やアドバイスから、陽氏の人柄も滲み出てきた。

画像

レンティング陽氏 
Photo: Courtesy of Jun Shimizu



一般的な雑誌やテレビのインタビューでは、枠や尺の縛りが有り、時には、インタビューに答えた人間の想いとは、ややかけ離れたものになったり、相当話したはずなのに、実際に掲載された記事や映像は尻切れトンボだったり、物足りなかったり・・・。

本インタビューでは、貴重な時間を割いてくれた陽氏の言葉を、可能な限りそのまま、選手の皆さんにお届けしたいと思う。とは言え、長いインタビューなので、連載形式で本ブログに投稿し、特に興味を持って読んで欲しいと思う部分は、太字/下線を、有益な情報やアドバイスは赤太字/下線で表した。是非とも、隙間時間に少しずつでも、目を通してもらえたらと思うが、時間に制約があれば、太字や赤字、下線の引かれた部分を中心に、トレーニングや競技への取り組みに、活かしてもらえたらと思う。




レンティング陽氏 インタビュー 
第1回 「W杯30位以上の成績突破には、指導者の力が必要不可欠」


インタビュアー B: Blythe
インタビュイー A: Akira(レンティング陽氏)



B: このインタビューをお願いする前に、インタビューの趣旨や、こちらで考えている質問の内容を予めお伝えしましたが、その事前のやり取りの中で、陽くんは、現在のクロカン界が抱える大きな問題の一つに、指導者の指導そのものに対する情熱の欠如をあげていましたね。引退した身とは言え、簡単に話せる話題ではないでしょうし、簡単に解決できる問題でもありませんが、特に世界での活躍を視野に、競技に取り組んでいる日本人選手にとっては、今後の競技成績や活動そのものを左右する深刻な問題だと思います。先ずはこの件について、陽くんの意見を聞かせて下さい。


A:  僕は長野で小、中、高まで(クロスカントリースキー)をやって、大学は東京に出てきて早稲田で、その後は、社会人になりスポンサーを募ってプロの様な形態をとって競技活動をしてきたのですが、正直、高校までは指導者に不満を感じたことは無く、僕等の場合、中学時代は特に熱意を持って指導してくれたコーチがいました。高校は、逆に先生が生徒に任せる自由な校風だったので、その時に自分で何事も考えて取り組むと言うベースができたのだと思います。大学は毎日練習を見てくれる様なコーチはいませんでしたが、学生皆で話し合いながら、メニューを決めたり、ナショナルチームのコーチに相談しながら決めたりして、指導者の熱意と言う点を含め、特に不満を感じることはありませんでした。


ですが、社会人になり、いよいよワールドカップでポイント30位以内を目指します、それより上を目指しますとなった時に、そこのレベルに到達させてくれる指導者が、日本には現状いないのかな、と感じています。今、結果を出している選手は、選手個人のやり方や考え方でそのレベルに到達しているだけで、優秀な指導者がいて、その指導者が何人も選手を育てあげている、と言う感じではないです。僕が何年も不満を感じ、このままでは不味いなと思うのは、トップレベル、ナショナルチームレベルでのコーチングシステムが欠如していて、それをどうにかしようと思う熱意、例えば、海外へ留学してコーチングの勉強をしようとする様な人がいません。コーチング面でのサポートが無理でも、例えば現場で、コーチング以外の面で選手が安心して活動できる様にとか、ナショナルチームの活動が少しでもスムーズにできる様にと動いてくれる人がいれば良いのですが、そんなシステムもほぼ無くて、なんとかしようと言う情熱、みたいなものが感じられないんですよね。現状を何も変えられないまま、ずるずるきていることに、不満を感じてきました。


トップレベル、ナショナルチームレベルで指導者の情熱の欠如を上げましたが、それとは別に、指導者の基本的な指導力の面で言うと、小学生の指導から言えることですが、日本はかなり独特で、個々のコーチ達がそれぞれの経験だけで指導をしていて、情熱があっても、体の使い方やスキーの乗る位置と言った、スキーの基本みたいなものが、日本人は結構違っていて、僕等がやっと大学とか、世界に出始めて、初めて「違ったんだ!」と気付くことになって、一から直さなくてはならなくなるんですけど、中々直らなくて、そこからすごく時間がかかるんですよね。


スキーの基礎の基礎だけは、日本全国統一して、これだけは教える、みたいな指導方法が確立される必要性を感じます。


SAJの指導者研修が年に数回開催されているのですが、そう言ったところで伝えることで、浸透して行くかなとは思うんですが、伝える側のトップレベルの指導者自体が、何が本当の基本なのかをいま一つ分かっていない様な感じなので、そこをどうにかしていけたら良いな、と。


日本人選手の場合、少なからずどこかで、自分が今までやってきたジュニア時代のテクニックを大きく変えないと、世界には通用しないと言う壁に突き当たるんです。


小、中、高までは、本当に熱心な指導者がいるんですけれど、それ以降はどんどん指導者がいなくなってしまうのが日本の現状です。


B:  ワールドカップで30位以内を目指す様な、高い目標を掲げている日本人選手達が抱える共通の問題点は、「指導力のあるコーチの不在」とのことですが、選手達が欲している、具体的な「指導力」とはどういったものでしょうか。


A: 実際に技術的な指導をする指導力もそうですが、選手の心を掴んで、モチベーションを上手に高めてくれたりするのも、求められる指導力だと思います。クロカンは個人競技ですが、ワールドカップやオリンピック、国内の大会も、何れかのチームやコミュニティーに所属していれば、チームで回る訳で、皆で盛り上げて良い雰囲気の中やって行こう!みたいな、そう言うことも含めての指導力なのかな、と思いますね。このチームだったら、このコーチ達とだったら、ちょっと強くなれそうだよね、と言った雰囲気があるだけで、上手く回っていくと思うんですよ。


B: 日本のナショナルチームのコーチ達には、こう言った指導力が不足しているとのことですが、コーチ達が情熱を傾けて取り組み難い理由に、SAJの資金難は少なからず影響していると感じます。コーチ業1本に専念して生活して行くのは、現状厳しいかな、と。選手もそうですが、コーチがやるべきこと(仕事)は非常に多いはず。ところが、十分な収入を保証してもらえなければ、仕事の割に個人の犠牲が多過ぎて、見返りがない、と言うか、やっていられるか!となり易いのかなと。組織内のしがらみとか、色々あるでしょうし。


SAJと言う組織はさて置き、選手とコーチ達がタッグを組んで、選手達がコーチ達の置かれている状況を把握する努力、そして、コーチ達が選手達の本当のニーズを汲み取る努力をして、どうにか厳しい現状を打開する方法はないでしょうか。例えば、コーチ達に求められる指導力の一つに、選手のモチベーションを上手く上げる、がありましたが、それをする為には、コーチ達が信頼できないと無理ですよね。


A: ナショナルチームのコーチ達の給料事情は分かりませんが、ヘッドコーチを含め計2名はたしか、JOCのコーチ登録になっていて、その人達は普通の給料はもらっているはずで、そんなに酷い給料ではなさそうです。選手がどうやってコーチを信頼するのか、ですが、現在のコーチ達は選手としての実績がそこまで高くない、経験の面でも今の選手達よりも既に劣っている、そしてかつ、そのコーチ達が海外等へ行ってコーチの勉強もしに行っていない、なので、今の選手達の経験値等を超えることが出来ない訳です。そして、今のナショナルチームのコーチに、メニューを立ててもらっている選手はゼロなんです。ですから、本来コーチのメインの仕事である「コーチング」の仕事はできていない、と言えますよね、選手から信頼されていなくて。それを変える為には、コーチ側ができることとしては、やる気を見せると言うか、とにかく何事も一生懸命コツコツやっていく。例えばトレーニング時にビデオを撮りながら一緒に確認作業をするとか・・・でも、そこで直ぐに適切なアドバイスができないと、ここで言う本当の信頼には中々つながらないんですよね・・・。ビデオ撮影は、やろうと思えば誰でも出来る訳で、そうするとコーチの意味が見出せないと言うか。なので、ベストの解決策はやはり、最低でも2年ぐらい、1年はクロカンのコーチング、そしてもう1年は他競技を含めたコーチング全般を海外で学んできてくれて、それを選手に還元することで、選手、コーチ間の信頼関係も築けるかなとは思うんです。


B: とは言え、コーチング留学を実現させるにしても、対象者になる得る人達の多くが家庭を持っていて、恐らく、家族を留学先まで連れていくだけの金銭的補助はSAJには期待できないでしょうし、個人でそれをするのは大変でしょう。そして、多くの日本人の場合、語学的なハンディ、壁を持つ人が多くで、コーチングそのものに興味はあっても、まずそこで尻込みするのではないかな。


A: 言葉の問題は大きくて、コーチ達は海外に行っても他国の情報を入手してこないんですよ。他国のコーチ達とのつながりがないから、情報を持っていない。選手達は海外に行けば、選手同士で例えば「どんな練習をしているの?」等、聞いたりはするんですが、本当はコーチ達が海外のコーチ達とつながっていて、色々な情報を仕入れて、コーチ達からこんなトレーニング方法もあるよ、と選手に落とし込んでくれるといいんですよね。


B: 信頼できるコーチ達に求められる資質の中に、国内はもとより海外でどれだけ幅広いネットワークを持っているか、がありますよね。


A: そうです。例えば日本チームが海外へ1週間、合宿に行ってる間に、他国チームとの合同練習の手配ができるとか、ワックスマンを探してくるとか・・・でも今の日本チームにはそのネットワークがない。

B: ネットワーキングで、実際に結果を出している良い例がアメリカの女子チームですね。約10年の間にネットワークをフル活用して、強豪ノルウェー、スウェーデンの選手達と切磋琢磨し、その度に自信を付けて、今までの取り組みがこの数年で見事に開花しました。




第2回 インタビューへ続く。









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