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zoom RSS 「自主性と言う名の迷路」からの脱出〜大学4年間にすべきこと〜

<<   作成日時 : 2017/05/21 16:59   >>

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29歳にしてW杯総合優勝を遂げた遅咲きのMartin Johnsrud Sundbyの様な選手は例外で、クロカン強豪国ノルウェーのナショナル・チームメンバーの多くが、男女共に18〜19歳頃から国際舞台で「頭角」を現し始める。しかしながら、先シーズンの超新星、「20歳」のHoesflot Johannes Klaebo がW杯SP部門でいきなり1位、総合ランクでも4位になったりすることは、ノルウェー人選手の中でも、別格と言っていい。


不思議な偶然だが、Therese JohaugもHeidi Wengも「22歳」から常にW杯総合ランク5位以内を維持し続け、共に、W杯総合優勝を果たしたのは「25歳」の時。傍から見て、圧倒的な力を見せつけている様でいても、超エリート選手でさえ完全王者になるにはそれなりに時間がかかる。Petter Northug Jr. も同様に、28歳と、31歳だった先シーズンを除き、22歳からW杯総合ランク5位以内を維持、総合優勝は23歳で果たしている。


そして、男女共に多くのノルウェー人選手が23〜26歳でW杯総合ランク30位圏内入りを果たす。選手層の厚いノルウェーでは、選手間の争いも非常にシビアだ。


それに対し、最近の日本人選手の成績の傾向を見てみると、現在36歳の石田正子選手が、W杯の30K CLで3位入賞と言う快挙を成し得たのは、彼女が28歳の時、そして吉田圭伸選手は先シーズン、30歳でようやくW杯で10位となり、自己ベストを更新した。5年以上に渡り、日本人選手の場合は、連盟の方針としてW杯参戦率が低い為、総合ランクの話は適切とは思われないが、それにしても遅咲き感は否めない。


ノルウェー人選手の多くが、国際舞台で結果を出し始める18〜19歳、そして、超エリート選手なら、22〜23歳で、世界の頂点に立つ頃、日本の同年齢の選手達、つまり大学生選手は、自主性重視と言う名の迷路を彷徨い、4年間と言う「まとまった」長さでかつ、貴重な育成期間を無駄にしている。それが、最大の遅咲きの原因だと以前から感じている。


18〜22歳の4年間は:

1. 本当の自分を知る
2. 自分に最もあったトレーニング方法を知る
3. 自分に最もあったコンディショニング・ピーキング方法を知る
4. 土台づくり


と、スムーズにシニア期へ移行する為、そして世界に通用する力を蓄える為の重要な準備期間だ。


2015年シーズン、W杯総合ランク上位6位を独占したノルウェー女子のトレーニングについての最新の研究データが、昨シーズンリリースされたが、6人の平均年間トレーニング時間は920時間。総合ランクトップだったMarit Bjorgenは最も多い980時間だった。その更に上を行くのが、Martin Johnsrud Sundbyの1000時間強。


2013年時にリリースされた別の研究データでは、過去10年間にオリンピックで金メダルを獲得した、ノルウェーとスウェーデンの選手の平均年間トレーニング時間は、スプリント選手で750〜850、ディスタンスのスペシャリストで、800〜900とある。


2014年にリリースされた、クロスカントリースキーとバイアスロンで金メダルを獲得した11名のノルウェー人選手の年間平均トレーニング時間は770時間だった。


ある専門家の話では、W杯の様な国際舞台で常に15位以内にランクインしている選手達は年間675〜900時間のトレーニングをこなしている、と結論づけている。そのトレーニング時間に驚く程の差があることが、興味深い。


では、現在の日本ナショナルチームはどうか。 ジュニアの目標年間トレーニング時間は700、そしてシニア選手は900時間と言われている。現在の日本の雪国強豪高校の選手達がだいたい年間500時間のトレーニングに到達できるかどうかだが、高校卒業直後、全日本が掲げる目標数値への「大きな開き」があることを、ここで押さえておいて欲しい。そして、現在のナショナルメンバーで、これだけの練習量をこなせている選手は、私が知る限り、2015-2016シーズンに1名の選手のみだ。


高校時のトレーニングボリュームは海外の同世代と比較しても、引けを全く取っていないが、高校卒業後、「自主性重視と言う名の迷路」のお陰で、多くの選手のトレーニングが質、量共に、落ちる傾向がある。


専門家の話では、トレーニングを最も行った選手が、最も速く滑れる訳ではなく、それは、各選手の遺伝的特徴、病歴、怪我、故障、資金源、トレーニングパートナー等で、差異が生じてくる。


ある選手は、速く滑れる様になる為に、ゆっくりと時間をかけて効率性を高めて行く。又、ある選手は、パワーを鍛えることで、速く滑れるようになって行く。つまり、パフォーマンス向上は、どの様なタイプの選手かで、異なってくると言うことだ。もし、効率性を高めることで速くなれるタイプの選手であれば、他の選手より、多くの時間をかけてトレーニングをし、その効果が上がるのにも時間がかかることを、ここで把握しておいて欲しい。


興味深い具体的なデータとして、2010年時、23歳でW杯総合初優勝を果たしたPetter Northug Jr.の年間トレーニング時間は850時間。そして当時、Northugにとって、良きライバルだった、スウェーデンのMarcus Hellner がほぼ750時間だったが、その5年後Hellner は、900時間近いトレーニングを行うようになる。ところが、2009〜2012年に、オリンピックとWSCで金メダルを獲得し、TDSでは総合2位になった、彼の最盛期の成績からは、ほど遠い。


20歳でW杯SP総合トップ10入りを果たし、過去4シーズン、W杯総合10位 → 4位 → 2位 → 3位とスプリンターからオールラウンダーに見事成長したIngvild Flugstad Oestberg は、Lahti WSC 直前まで好調を維持していたが、肝心のWSCにはピークを合わせることが出来ず、Team SPは愚かリレーメンバーからも外され辛酸をなめた。


ここ数年、本業以外で目立つことが多かったお騒がせPetter Northug Jr.も先シーズンは、シーズンイン直前まで、順調な仕上がり具合だったが、晩秋の最後のオフトレ期高地トレーニングで、正しいコンディショニングを怠り、シーズンそのものを、ほぼ棒に振ったと言っていい。


そして現在、クロカン界で最も成功しているスーパーアスリート、Marit Bjorgenは、今から14年前の2003年、当時22歳で頭角を現しW杯でめざましい成績を上げる様になるが、突然2008年、2009年に不調に見舞われ、彼女の時代は終わったのか・・・と囁かれたこともあった。


Bjorgenが頭角を現し始めた同時期に、より多くのスプリントや、マス・スタート・レースの導入が始まり、それ以前のインターバル・スタートでは、あまり求められなかった、レース中のペースの揺さぶりへの対応力等に特化したトレーニングとして、ウェイトトレーニングに多くの時間を割き、週に3〜4日連続で「これでもか?」と言う程の想像を絶するハードな高強度(Intensity) トレーニングをブロック単位で何週も続けて行うなどしていたが、オーバートレーニングによる慢性疲労で2008, 2009年に絶不調に見舞われた。


世界の頂点を目指し、年々トレーニングボリュームを増やし、新たな試みをし続けている選手の中に、スウェーデンのCharlotte Kallaもいるが、彼女も先シーズンの1ピリ中に、恐らくオーバートレーニングによる体調不良で、戦線離脱を余儀なくされた。


現在のBjorgenは、2シーズン前の出産を経て一児の母となり、様々な経験を過去15年積んできた結果、定期的にスプリントや、無酸素運動レベルのMax トレーニングを少し取り入れるものの、殆どの時間をゆっくりとしたスロースキーの持久走に割くと言う。15年前には考えられないほど、限られたトレーニングバリエーションだが、彼女が出産直前の2015年時、年間980時間のトレーニング量に到達するまでに「15年を費やしている」こと、これが、人間の体は急に無秩序に鍛えても、結果を出すことが出来ず、ある程度時間をかけて体の土台作りを行い、徐々に体を慣らしつつ、常に新しい刺激を与え続けて体が鈍化しない様に、細心の注意を払う必要がある、と言うことなのだ。


そして前述の通り、現実として現在のW杯総合トップ15にランクインしている選手の年間トレーニング質、量、共に差異があり、時間をかけて徐々にトレーニングを積んで行くとしても、そのトレーニングの内容は、選手一人、一人、遺伝的特徴、病歴、怪我、故障、資金源、トレーニングパートナーの有無で異なる。


そして、最も重要なことは選手自身が、どのトレーニングタイプで最も力を発揮でき、結果を出すことが出来るのか、それを先ずは知る必要があると言うことだ。


ここで、文頭で触れた18歳から22歳の大学4年間で行うべきポイント4点の重要性に行き着く。


4年間は長い様で短いが、4年と言う限られた、しかし、まとまった期間に出来ることは、選手次第で無限にある。


シーズン中に、レースに支障が出ないウェイトトレの頻度について質問をよく受ける。ウェイトのメニューについてもそうだが、本来、これは選手一人、一人異なるし、こう言ったことは、オフシーズンに選手自身がラン、トレラン、ローラ、バイク等の大会に実際に積極的に参加することで、大会前後、最も自分に適したウェイトトレのタイミング、頻度、そしてメニューを洗い出すべきだ。


又、その中で、どの程度の頻度で、どの様なレースに参加すると、自分の体は疲れに対してどの様な反応をすのか? その疲れをどの様に取るべきかなども、個人差があることなので、試行錯誤して、自身に最もあったコンディショニングや、ピーキングに役立てるべきで、メンタル面もしかり、オフトレ期間中、そしてシーズン中も、常に自分の体と心に向き合い、惰性で時間の流れに身をまかせるべきではない・・・いずれ世界へ羽ばたきたいと思っている、高い志を持っている学生選手ならば・・・。


大学入学と同時に高校時代と比較し、トレーニング量がいきなり上がり、オーバートレーニング気味で、結果が出せずにいる選手もいる。辛いトレーニングに意味が無いなら、やらない方がいい。辛いトレーニングをやるなら、絶対に結果を出したい。


まともなレストも取らず、例えば高強度のインターバル・トレーニングを行う。何が起こるかと言えば、単なる疲労を通り越し慢性疲労に陥っている場合、インターバルの最大の目的:心肺を煽り切ることが出来ない。脚も動かない。心拍が上がらず、インターバル・トレーニングで本来期待できる効果が上がらない。


慢性疲労なのか、ただの疲労なのか、これを見極める感覚の鋭敏性も、学生時代に磨いて欲しい。


不甲斐無い成績に対し、コーチも監督も、誰一人として責任を取ってはくれない。自身が本当に納得のいかないトレーニングに対しては、コーチ等の指導者と、密なコミュニケーションを「自分から」図り、自身で能動的に解決して行く。自分の成績に自分自身が責任を持つこと。優れた指導者であれば、真摯な選手の悩みや意見に対し、耳を傾けないと言うことは、本来有り得ない。


常に結果に徹底的にこだわるトレーニングは集中力を要する。完全レスト時に、如何に上手に心も体もリセットできるか、オン・オフのメリハリの大切も学生時に学んで行く。


大学4年間をどう過ごすかが、選手としての能力の幅を狭めも広めもすることを、心から知って欲しいと思う。




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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
毎度毎度たいへん勉強になります。
ありがとうございます。

KATANACHICHI
2017/06/02 21:29

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