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zoom RSS 具体的な事実を知る: Martin Johnsrud Sundby のドーピング違反について

<<   作成日時 : 2016/08/16 12:23   >>

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Sundby のドーピングによる 2014-2015 シーズンのTDS、そしてW杯総合優勝のタイトル剥奪の報道には、正直ショックを受けた。


実際、何が起こったのか・・・?


遅咲きの闘魂アスリートで、自身が崇拝する念が強かったこともあり、具体的に何が問題だったのか・・・そこを知りたいと思った。


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Martin Johnsrud Sundby
PHOTO: BRAASTAD, AUDUN / NTB SCANPIX
Sourced from NRK.no
Posted here only for personal use


そして、様々なニュース記事に目を通して気付いたのは、Sundby の今回のドーピング問題は、近年問題になっている筋肉増強剤系ドーピング、神経を興奮、高揚させるドーピング、ヘモグロビン(血中酸素値操作)ドーピング等と一緒に括って取り扱うべき問題では無いと、自身が気管支喘息の一患者として感じるに至った。


違反が疑われている、Sundby のドーピング検査用尿サンプルは2014年12月と、2015年1月に採取されたもので、この2つの尿サンプルで問題になっているのは、一般的な喘息薬:サルブタモールが尿に含まれていた量だ。


今回、違反が報じられてからかなりの時間が経過していることに、不快感を感じる者が多いが、このタイムラグの原因は、WADA(世界アンチ・ドーピング機関)が問題を指摘した際、FIS が Sundby はルール違反を犯していない、との結論を出した為だ (ノルウェーのライバル国にあたる海外のメディアや選手の中には、あからさまにこれが不公平な扱いだと、不満を表す者がいた)。


ここで押さえておきたいのは、Specified Substance と言う言葉。これは、アスリートの尿サンプルで確認されても、ドーピング以外の、信頼できる理由の為に検出された、と理解できる物質のことで、サルブタモールもこれに該当する。


ドーピング違反が疑われる物質が、この WADAで指定している Specified Substance の場合、FISは、FISがこの問題を解決するまでは、Sundby に暫定的な資格停止処分を課す縛りが「無い」のだそうだ。


FISのアンチ・ドーピング聴聞会で Sundby に違反行為は無かったとの結論に至った為に、FISはこれを公表する義務も無かった。又、当事者である Sundby の同意が得られなかったので、そもそも公表が出来なかったらしい(これもFISルールによる)。


FIS とノルウェースキー連盟は、FIS のアンチ・ドーピング・ルールと WADA の規程に示された規則と手順に従った、とFIS 事務局長の Sarah Lewisは答えている。


この様な背景があった為、スポーツ仲裁裁判所 (CAS) が WADA の申し立て: 「Sundbyのドーピング違反」に対し、違反行為があったと判決を下した為に、ようやく FIS に公表の義務が伴い、これだけのタイムラグが生じて、Sundbyのドーピング違反が取り沙汰されるに至った。


サルブタモールは普通に喘息・気管支喘息の患者が使用する薬で、運動能力向上の作用があるとは見なされておらず、又、多くの医師や医療研究者が、喘息や運動誘発性の気管支痙攣による気道の狭窄が無い(つまり何の問題もない健康な)アスリートが使用しても、心身の機能を高める強壮効果は無い、と結論づけている。


実際に健康なアスリートに喘息薬を投与して、タイムトライアルやレースなど多くの研究やテストを行ったが、パフォーマンスの向上は見られないのだ。


こう言った事実があっても、WADAが、サルブタモールを含む喘息薬の高濃度での服用を禁じている理由は、マスキング剤、つまりパフォーマンスを向上させる違反薬の使用を「隠す」目的で使用されることを禁じる為だそうだ。


今回、問題になっている Sundby のケースでは先ず、2つの尿サンプルに高濃度のサルブタモールが検出された際、彼が TUE (治療使用特例)申請をしているかどうかの確認がなされたが、Sundby は医師の指示に従い、申請を行っていなかった。


日本国内でも、国体クラスの大会に出場経験のある選手なら、各都道府県の予選会を突破した時点で、本選に出場する前に、必ずTUE申請有無の確認を求められるので、TUE の存在を知らない選手は殆どいないだろう。


何故、Sundbyは申請を行わなかったのか・・・。


理由は、サルブタモールを吸引ではなく、ネプライザー(噴霧器)で摂取していたので、TUE申請は不要だと思っていた、と言うことだそうだ。 ネプライザーは以下の写真・情報を参照。



喘息薬の主な種類


1) ネプライザー
液状の薬を霧状にして吸い込むタイプ
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2) pMDI (加圧噴霧式定量吸入器)
ガスの圧力で薬を噴射するタイプ(発作時直ぐに効果がある)
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3) DPI (ドライパウダー定量噴霧器)
粉末状の薬(ドライパウダー)を吸い込むタイプ
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※ Martin Johnsrud Sundby が使用していたのは1)のタイプ


ここに掲載した写真は全て:
独立行政法人 環境再生保全機構 様より拝借
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/child/10.html
Posted here only for personal use




ノルウェーのナショナルチーム男子のコーチ、Tor-Arne Hetland は、(高い代償を払ったが・・・)今回の Sundby の件でネプライザー使用の正しいルールを知ることとなり、今後この用な間違いを二度と起こさない様、細心の注意を払うとのこと。


ここで気になるのは、当事者のMartin Johnsrud Sundby が自分自身の喘息治療について、トップアスリートとして責任を持ち、周囲に頼るだけでなく、自分自身でもこの様なドーピング違反行為を未然に防ぐことは出来なかったのだろうか・・・と言う点だ。


この点に関して衝撃を受けたのは、現在の FIS Ruleでは、アスリートは「各国ナショナルチーム・ドクターの指示に必ず従う」と言う縛りがあり、Sundbyの サルブタモールの摂取量も、摂取方法も、1998年以来ずっと信頼され、アスリートをサポートし続けてきたノルウェーのナショナルチーム・ドクターが指示を出し、Sundby は現行の FIS Ruleに従い、指示通りに治療薬を摂取しただけだ、と言う点だ。


つまり、当事者のSundby自身では、今回のドーピング違反行為を防ぐことはほぼ不可能だった、と言うことらしい。


その為、特にノルウェー国内では、Martin Johnsrud Sundby をある種の被害者として見る者も多く、哀れれむ声の方が多い。ドーピング違反と見なされた尿サンプルが採取された 2014-2015 シーズンの TDS 総合優勝と、2014-2015 W杯総合優勝を剥奪され、何より本人のプライドが一番、傷つけられたことだろう。そして、ナショナルチーム・
ドクターは今回の騒動で辞任をしている。


この様な問題が起こらぬ様にする為にも、FISで既存のルールに対し今後の対応策が求められる様だ。


Sundbyは、今月下旬にはノルウェー・ナショナルチームの合同トレーニングに合流が可能となる。


ちなみに、2015-2016の先シーズンは Sundby はサルブタモール に一切頼らずシーズンを乗り切った。


ドーピングについてだけでなく、ルール一つを取っても、アスリートである以上、無知でいることは許されない。常に最新情報を熟知し、不明な点があれば、その都度クリアにしていく、競技者として競技だけやれば良いのは小学生まで。知りませんでした・・・の言い訳は Martin Johnsrud Sundby クラスのトップアスリートにも許されない。





News sourced from NRK. no, Fsaterskier.com

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